好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
いやだよ。
ぜったいに、いやだ。
いいわけがない。
さっきまで、わたしのことなんて見なかったくせに、こういうときだけわたしに顔向けて。
わたしと話したいとかうそ。
いっくんと一緒にいたいからに決まってる。
わたしは利用されてるんだ。
ぜったいにそうだよ。
いやだ。
ぜったいにいやだ。
「……すみません。わたし少し、しんどくなってきて」
「え?」
「くるちゃん大丈夫?」
後ろに重心を移動させれば、わたしの肩をいっくんが支えてくれる。
だから、そのまま完全に体重を預けた。
「たしかに顔色よくないね。ごめんなさい。私が暑い中で長話なんてしちゃったから」
「いえ、そんなことないです……わたし、帰るのでふたりでご飯行ってきてください」
「くるちゃんほっといていけないよ」
わたしの顔を覗き込んでくるいっくんに、ドキッとしたのと同時に胸がくるしくなった。