好きな人には好きになってもらいたいじゃん。



思わず泣きそうになる。



「暑いもんね。熱中症とまではいかないと思うけど」

「ん、大丈夫だよ」



わたしのおでこに手を当てるいっくんは本気で心配してくれている。

さっきまでわたしには向かなかった瞳が、いまはわたしだけをとらえている。



「じゃあ、姫野さん。ご飯はまた今度で」

「うん。胡桃ちゃんが元気なときに行こうね」



ぜったいに行かないもん。

姫野先輩がいたら元気にならないよ。




「また明日。胡桃ちゃんはゆっくり休んでね」



チラッと姫野先輩を見れば、微笑みながら手を振っていた。

……優しくしてるのだって、いっくんがいるからでしょ。


そうに決まってる。


まだわたしを支えてくれているいっくんのブレザーをぎゅっと握りしめた。




「胡桃は俺が連れて帰る」



その声と同時に、わたしの体はいっくんから離される。

不意打ちで、握っていた手も緩めてしまった。




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