好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
いっくんにどう見てもらいたいか、いっくんに心からの「かわいい」をもらうためにはどうすればいいのか。
そればかり考えている。
なにもしないで、好きになってもらえるなんて思ってないから。
どんなことをしても、自分をつくってでも、好きになってもらいたい人がいるんだもん。
わたしはいっくんに好きになってもらいたい。
「胡桃行くぞ」
「え、別々に……」
「早くしろ」
「くるちゃん、またね。廉は部活遅れないように」
廉はわたしの言葉もいっくんの言葉もまともに聞いてくれず、昇降口で靴を履き替えるとすぐにわたしを引っ張った。
いっくんとは手を振りあうだけで、今日の登校は終わってしまった。
廉につかまれた手を振りほどこうとするも、けっこう強くつかまれていて離れない。
「離してよ」
「やだよ」
「なんで!」
「昔はこうして手を繋いで学校行ってただろ?」
「幼稚園だけだし。てか、廉とはそんな思い出ない」