好きな人には好きになってもらいたいじゃん。





わたしの頭をクンクンと嗅いでいるかほちんは犬みたいで、少し笑ってしまった。

でも、それ以上に気づいてくれてうれしい。



「さっすがかほちん!ヘアオイル変えたの」

「やわらかくて甘い香りだね」



ツインテールのわたしの髪の束をふたつとも持って、鼻を近づけるかほちん。

それがなんだかくすぐったくて身をよじる。



「かほちん、くすぐったい」

「えーいいじゃん」

「べつに、いいけど」


と、言いながらわたしもかほちんのポニーテールに手を伸ばす。

ふたりで髪を触りあってイチャイチャする。


バカップルみたいなわたしたち。




「胡桃」


だけど、名前を呼ばれたと同時にわたしのお腹に回ってきた手によって、かほちんから無理やり離される。

せっかくイライラを忘れてたのに、また思い出させられた。


わたしを名前で呼ぶのなんて廉しかいない。



キッと睨めば、むすっとした表情。




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