好きな人には好きになってもらいたいじゃん。



とりあえず目が合うとにこっと微笑むといいって雑誌に書いてあったのに。

いままでもそれで、相手からの印象も悪くはなかったはず。


こうして思いきり顔を逸らされることは初めて。


しかも怯えていたような表情だった……?




「……見てんじゃねぇよ」

「廉?」

「胡桃も、目立つな。騒ぐな。見られんな」

「え?」



それだけ言うと、あっさりとわたしから手を離す。

そして、わたしの近くの席に音を立てて座った。


なに?

なんでそんな不機嫌?


不機嫌になりたいのはわたしのほうなんだけど。




「くるたんくるたん」

「ごめんね、かほちん」

「ううん、あたしのほうこそごめん」



廉を気にしながら、小声でかほちんと話す。

廉は相変わらず不機嫌で、足を組んで座っている。


そこに町田くんがやってきたけど、表情はむっとしたまんま。






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