好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
手を繋いでたのもいっくんであって、廉ではない。
わたしの大切な思い出に割り込んでこないでほしい。
昔から廉はいじわるだった。
スカートめくりだってされたことあるし、大嫌いな虫を服の中に入れられたこともある。
本当にガキで最悪ないじめっ子。
当時のわたしは泣いてばかりで、それをいつも優しく助けてくれたのがいっくんだった。
いっくんは王子様みたいに優しくて笑顔で素敵なんだ。
だからわたしはずっといっくんが大好き。
初恋の相手で、いまもいっくんがいちばん大好き。
「ほら、手」
「やだ」
「嫌がらせ?」
「あぁ」
「最悪……」
「おはよう!」
ドアの前でやりとりをしていると、いきなり声が聞こえて驚いて廉の足を思いきり踏みつけた。
「ってぇ!」
痛がる廉から手を引っ込めてやっと解放される。
目に涙溜めているけど嫌がらせする廉が全面的に悪い。
自業自得だ。
「おはよう」
振り返ってにこっと微笑みながら挨拶を返す。
そこには歯を出してニカッと笑う男の子。
廉の友達の町田凛太郎くんだった。