好きな人には好きになってもらいたいじゃん。



せっかくの文化祭なんだから、みんなで協力して楽しく作りたいじゃん。


わたしは張りきってるよ。

そっちのほうがぜったい、楽しいもん。




「そうかよ」

「そうだよ」



言いながらカバンを持って立ち上がる。

もう委員会は終わったし帰ろう。


その前にいっくんと話したいな。

ばいばい、くらいは言いたいな。



「えー?どうだろうね?」

「僕はそうだと思うけど」

「ふふっ、じゃあ明日が楽しみだね」

「当たってたらなんかしてよ」

「なんかってー?」



いっくんを見ると、まだ椅子に座って姫野先輩と笑顔で話していた。


いたずらに笑ういっくんに胸がくるしくなる。


知らない。

わたしの知らないいっくん。



こんないっくんは、わたしの好きないっくんじゃないよ……。






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