好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
椅子に座ったままのいっくん。
わたしを見上げているのが新鮮で、胸がまたきゅっとなる。
「……ぶつかって、ごめんね」
いっくんから離れる。
ほんとはまだいっくんの近くにいたいけど、できなかった。
胸がくるしい。
いっくんも、いつもと違うわたしの態度に気づいてね。
気にしてね。
そんな思いを込めて、いっくんの横を通り過ぎるときにチラッと視線だけ向けてから目を伏せた。
「くるちゃ……」
「樹、部活」
わたしが離れたあとにすぐ、そこへ廉が行く。
わたしを気にしている様子に見えたけど、もう背を向けてしまったからわからない。
いっくんが言いかけた言葉は気になる。
また廉の邪魔が入った。
でも、今回はそれでよかったのかもしれない。
そのまま振り返らずに教室をあとにして、家路についた。