好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
ドアをノックする音が聞こえたあとに、思いもよらない声。
驚いて大きな声を出してしまった。
ど、どうしていっくんが!?
「入っていい?」
「え、ちょっ……」
「だめ?」
「だめじゃない。……けどまっ、」
「よかった。入るね」
わたしの言葉を最後まで聞かずに、いっくんはドアを開ける。
焦ってビーズクッションから降りようとするも、深く座っていたから抜け出せずそのまま。
最後の抵抗として、ドアに背を向ける。
「くるちゃん、いきなり来てごめんね。びっくりしたでしょ」
「……うん」
「くみちゃんが通してくれたんだ」
お母さん〜!!
入れる前にわたしに声かけてよ!
そんなわたしの心の声むなしく、いっくんは目の前へと回り込んできた。
そしてしゃがんで目線を合わせるからドキドキが止まらない。
「……どうしたの?」
もうこの際、いまさらこの態勢をどうにかするほうが無理だった。
もごもご動くほうが不格好だ。