好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
「今日もおさげかわいいね」
「ほんとに?ありがとう」
「月島って髪の毛ふわふわしてておしゃれ」
いっくんにかわいいって言ってもらうために、朝早く起きて丁寧にしてるんだもん。
ヘアアレンジもいろいろできるようになった。
「けっこう楽しいよ」
「……二重人格」
「わたし、行くね」
ボソッとつぶやいた廉のすねを歩きながらさり気なく蹴って、町田くんに軽く手を振って教室に入る。
また鈍い声が聞こえたけど気づいていないふりをする。
二重人格とかやめてよね。
こういうこと、廉にしかしないし。
わたしの努力を無駄にするようなことしないでほしい。
自分の席に着いて、教科書を引き出しに入れる。
「くるたんおはよう」
前の椅子が引かれて、顔を上げるときれいな黒髪をポニーテールにした美人。
わたしのいちばんの女友達の岸本果穂。
ふざけてるときについた“くるたん”って愛称でずっと呼んでくれる。
ちなみにわたしは“かほちん”って呼んでいる。
高校生になってもそれは変わらない。