好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
苦笑いを浮かべるいっくんだけど、わたしはにやけがおさえられない。
「カバンも玄関に置きっぱなしだし……」
いっくんが急いで来てくれたのがうれしいよ。
わたしのこと、考えてくれていたのがうれしい。
「来てくれてありがとう」
うれしさが爆発して、思わずいっくんに抱きつく。
「あ、僕ほんと汗だくで……」
「気にしない」
言いながらぎゅっと回した手に力を込める。
いっくんが好き。
いま、わたしの部屋にいることがうれしい。
いっくんが部屋に来たのは中学生ぶり。
わたしはいついっくんが来てもいいように、部屋の掃除は欠かさなかった。
初めて、その地道な努力を続けてよかったと思う。
「くるちゃんはいいにおいだね」
わたしのハグを受け入れてくれたいっくんは、頭をポンポンとしてから髪を撫でる。