好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
首を傾げて曖昧に笑ういっくんを雑誌越しに見る。
一生懸命でよく笑う子。
それは、だれのことを言っているんだろう。
「あんまり考えたことないからわかんないな。これで大丈夫?」
「……うん、ありがとう!」
笑顔を向けると、いっくんは手を伸ばしてわたしの頭も撫でてくれる。
「なにかあったら言ってね?」
ちょっと勘違いしてそうな気がするけど、それでもいいや。
いっくんが触れてくれるから。
わたしのことを気にかけて、こうして会いに来てくれたんだから。
いまはそれだけで十分だ。
「いっくん」
「ん?」
「だいすき」
「ふふ、僕も好きだよ。くるちゃんはかわいいね」
わかってない。
伝わってない。
幼なじみとしてじゃなくて、ひとりの男の子としていっくんが好きなんだよ。