好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
そう約束をして、いっくんに手を振る。
いっくんも笑顔で手を振り返してくれた。
本当に元気出たよ。
いっくんパワーはすごい。
わたしにはいっくんがいてくれないとだめだよ。
いっくんが家に入ったのを確認してから、自分の部屋に戻る。
それと同時に窓がカツンと音を立てた。
……最悪。
気づかないふりをしよう。
だけど、わたしがいることに気づいているのか何度も窓を軽く叩かれる。
「あーもう、うるさい!」
言いながらカーテンを開けると、仏頂面の廉の姿。
廉とは部屋が向かいで、昔はよく窓を叩いて呼ばれてた。
スマホを買ってからはこうして呼ばれることはなかったけど。
「なんなの?」
「なに、樹を部屋に入れてんの?」
「はい?」
「樹、そっち来てたろ」
「それがなに?」
そんだけ?
そんだけのために、こうして呼んだわけ?