好きな人には好きになってもらいたいじゃん。




大きなため息をつく廉。

これは呆れたときのため息だ。


廉のことならわかるもん。


わたしが上手に踊れるわけないって思っているに違いない。


ぜったいに、上手に踊れるようになるから。




「見てなよ。キレッキレに踊るから」

「はいはい」



なぜか笑った廉に、不思議に思いながらも他愛ない話をしていると視聴覚室に着いた。


すでに作業を進めている人もいる。



わたしは看板製作を任されているから、前回の続きから行っていく。

机をよけて、広いスペースが作られている場所に行き、作業を始める。




「ここ、塗れてないぞ」

「っ、びっくりした」


集中しようとしたら影が落ちてきて、驚いて顔を上げる。

ほんと廉はいちいちうるさい。



「わざと。あとで塗るの」

「ふーん」

「廉もさっさと行きなよ」

「樹がいねぇから」

「お兄ちゃんがいないと行けないの?寂しがりやだね」

「ちげぇよ、ばか」




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