好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
へへっと誤魔化すように笑うと、いっくんも微笑んでくれた。
どれだけ長い時間を過ごしても、何度この笑顔を見ても、心臓はいつも大きく跳ねる。
むしろ前よりもっと、いっくんにドキドキする。
「おい、胡桃」
「いっくん、廉が怒る」
「ほんと、廉はくるちゃんに優しくできないね」
いっくんのTシャツをぎゅっと握りしめると、いっくんはわたしの頭を撫でてくれる。
「樹!」
廉が声を荒げて、それには本気でびっくりして肩が跳ね上がる。
なんでそんなに怒ってるの。
「……折原くん、と胡桃ちゃん?」
廉の態度に不思議に思い、目線だけ廉に向けたとき。
高めの声に名前を呼ばれた。
「姫野さん、ごめんね。先に来ちゃって」
「それは私が先に行っててって言ったからいいの。胡桃ちゃん、どうかしたの?」
「あ、ちょっと僕の弟がね」
「え?弟!?」