好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
いっくんの声にすごい勢いで反応した姫野先輩は廉を見る。
廉はだるそうに首に手を当てて、視線を逸らす。
「折原くんの弟だったんだ。何度か顔は合わせたことあるよね」
「…………」
「折原くんと同じサッカー部だよね」
「…………」
「サッカー部にかっこいい1年生がいるって、2年女子の間で話題になってたけど、きっと折原くんの弟くんのことだね。かっこいいもん」
無言の廉。
廉って急に余所行きの顔するよね。
というか声かけられても無視する。
正直、いまは廉のその態度がわたしにとっては都合がいい。
ひどいことを思うけど、少しだけ気分は軽くなる。
「廉、返事くらいしろよ」
「知るか」
いっくんにもこの態度はどうなのかとは思うけど。