好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
廉はそんな様子を気にすることもなく、スタスタと歩いていく。
それをいっくんが追うようにして視聴覚室を出て行った。
ふたりの姿が見えなくなってから、わたしは作業を再開。
「……私、嫌われてるのかな?」
「…………」
「胡桃ちゃんは、折原くんの弟くんともすごく仲良いよね」
「……ケンカばっかりですよ。さっきもケンカしてましたし」
「でも、雰囲気が違うよね。私、怒らせちゃったみたいだし」
「廉はだれにでもあんな感じなので、気にしなくていいですよ」
って、なんでわたしが励ましてるんだろう。
意味わかんない。
べつにどうでもいいじゃん。
姫野先輩が廉に嫌われてようが、それで姫野先輩が傷つこうがわたしには関係ない。
廉が姫野先輩を嫌っているか、本当のところは正直わかんないけど。
だって、廉はいっくんと姫野先輩が付き合えばいいって思っている。
嫌いな人と実の兄が付き合えばいいなんて、普通は思えないもんね。