好きな人には好きになってもらいたいじゃん。
「美人で素敵な先輩に、そう言ってもらえてうれしいです」
ニコッと作り笑い。
心から笑うことはできない。
うれしいなんて思ってない。
姫野先輩に言われたって、うれしくない。
心と言葉が違いすぎて、自分で自分がわからなくなりそう。
「これからも仲良くしてね」
「はい」
「今度ご飯行こうよ。もちろん私が奢るから」
「ありがとうございます」
わたしの返事に、姫野先輩は本当にうれしそうに笑った。
ズキリ、と胸が痛む。
なんでわたしが傷つかなきゃいけないの。
思ってもない言葉を吐いて、素直にうれしそうな反応を示す姫野先輩に罪悪感。
なんて、感じなきゃいけないの。
余裕ない自分が嫌になる。
「……わたし、ちょっと出ます」
「うん」
姫野先輩の返事と同時に立ち上がり、視聴覚室を出る。
自販機のある場所まで、なんとか歩き飲み物を買った。