男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている

 カフェでおなかを満たしたあとは、特に目的もなく歩いた。
 初めての王都、初めての下町。ピケにはどれもこれもが新鮮で、面白くて仕方がない。

 下町の街並み、下町の匂い、下町の音。
 ピケはついつい、興味を惹かれた方へ、吸い寄せられるように歩いて行ってしまう。

 あっちへふらり、こっちへふらり。
 キョロキョロと落ち着きなく歩くピケは、王都初心者(いなかもの)そのものだ。
 隣を歩くノージーが堂々としている分、彼女の芋臭さが際立った。

 道行く人のほとんどは、初めての王都に目が(くら)んでいるピケのことを微笑ましく思って見守ってくれていた。
 だが、そうでない者はどこにだっているものだ。
< 102 / 264 >

この作品をシェア

pagetop