男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている

 小川が流れる公園を見つけた二人は、あざやかに色づいた並木道に誘われるように、足を向けた。
 レンガ敷きの道を、手を繋いでゆったりと歩く。

 ピケが隣を歩くノージーを見上げると、彼は興味深そうな顔をして空を飛ぶ小鳥を見たり、秋風に揺れる枝を見たりと、この散歩を楽しんでいるようだった。
 気持ちよさそうに目を細めながら空を見上げている姿は、魔猫の時と変わらない。秋の匂いを感じているのか、ツンと高い鼻が上を向いていた。

(そのしぐさも、猫の時と同じね)

 ノージーのまねをして、秋の匂いを嗅いでみる。
 澄んだ空気に混じった、微かに感じる甘い香りは銀木犀(ぎんもくせい)だろうか。
 雨が降ったらすぐに落花してしまう銀木犀の香りは、気づくことさえ稀だ。
 こうして気づいて、そしてノージーと一緒に楽しめることを、ピケは嬉しく思う。

(なんて平和な時間なのかしら)

 思えばずいぶん遠いところまで来ちゃったわ。
 物語の一節にありそうなことを考えて、ピケはふふっと一人笑う。
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