男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
 わかることで、変わるものがある。
 大人びた表情で飄々としている彼が困惑している姿は、思わず守ってあげたくなるようなかわいらしさがあった。

(男の人がかわいいなんておかしいかしら。でも……ノージーならアリよね?)

 突然笑い出されて、ノージーは困っている。
 彼が困れば困るほどかわいらしさが増していく気がして、ピケは耐えられそうになかった。

「……どうして笑っているのですか?」

「だって、ノージー……あなた、もしかしてあの時も?」

「あの時って何です?」

「魔獣が獣人になる理由を話してくれた時よ。あなた、私に恋をしたからだって説明したでしょ。やけに淡々と話すものだから、そういうものかって流してしまったけれど……そういうことだったのね!」

 ああ、かわいい。なんてかわいいのだろう。
 ピケはたまらなくなって、ギュッとノージーに抱きついた。
 突然のことに理解が追いつかないのか、ノージーの手が宙に浮く。

「ピケ⁉︎」

 抱き返してくれないのがまた、たまらない。
 ピケは湧き上がるかわいいを昇華させるべく、力一杯ノージーを抱きしめ続けた。
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