男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
四章

 ノージーと王都へ行って以来、ピケの中で何かが変わった。

 例えば、ノージーに「おやすみ」と言って部屋の前で別れる時。
 今までだったらなにも思わずに「また明日」と言って扉を閉めていたのに、不安に思うようになった。

 例えば、ノージーが「おはよう」と言ってピケを起こしに来た時。
 今までだったら「うるさいなぁ、もっと寝かせてよ」と文句を言っていたのに、安心するようになった。

 夜を一人で過ごすことが怖くなったのだろうか。
 どうして、今更。
 ピケはもう、ベッドの下にゴーストがいると信じている、子どもではないのに。

「よく、わかりません」

 子どもがむずがるような顔をして、ピケは行儀悪くテーブルの淵へ顎を乗せた。

「自分の気持ちなのに……。私は一体、どうなってしまったのでしょうか?」

 まるで重い病を患っている人のようだ。もしくは、重罪を犯して告解しに来た信者か。
 らしくもなく暗い声で語ったあと、ピケはテーブルへ突っ伏してしまった。
< 114 / 264 >

この作品をシェア

pagetop