男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
「真っ先に頼ろうと思う先がノージーなのも、イネス様の言う通りね」

 では、スキンシップが足りないという話もその通りなのだろうか。
 確かに、以前と比べたら触れ合う時間は格段に減ったと思う。
 朝も昼も夜も、一心同体かのようにくっついていたあの時がちょうど良いあんばいなのだとしたら、今はかなり足りていないだろう。

「だとしても。さすがに一緒に寝るのはナシかしら……」

 ノージーは「警戒してください」と言っていた。
 一体彼の何を警戒しろと言っているのかわからないままだが、夜中に一人で訪ねるのはよろしくないだろう。
 逡巡するピケの足が止まる。

「やっぱり戻るべきかしら……」

 ピケは後ろを振り返る。
 暗い廊下の先は真っ暗で、歩いて来られたのか不思議なくらいだ。
 寒気を感じてピケはブルリと肩を震わせた。と、その時である。
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