男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
「ゼヴィン総司令官。ピケに目をつけていたとはどういうことですか?」

「そのままの意味だが?」

 ノージーの問いかけに、アドリアンは無感情な声で答えた。
 彼の答えに、ノージーは馬鹿にしたような態度でため息を吐く。

「総司令官ともあろう者が、率先して約束を破るとは……」

 それまで無表情を貫いていたアドリアンの眉間に皺が寄る。
 訝しげにノージーを見下ろしながら、彼は苛立ちが滲む声を出した。

「何を言っている?」

「ロスティでは、王族や総司令部が中心となって、魔獣や獣人の保護に力を入れているのでしょう? それは、獣人の恋の応援も含まれているそうですね」

「ああ、そうだ」

「僕が獣人だということはご存じなのでしょう?」

「ああ」

「僕の相手に手を出すということは、そういうことでしょう」
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