男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
(なるわけ、ないっ!)
一応ピケもロスティ国民だが、その気持ちはちっともわからない。
オレーシャ地方出身だからといえばそれまでだが、それにしたってここの人たちは戦闘民族かと突っ込みたくなるくらい強さに執着しがちだ。
彼らを駆り立てるこの国の寒さとは、一体どれほどのものなのか。ピケはもちろん、イネスも耐えられるのか心配でならない。
当の本人は今朝も「雪はまだかしら」と窓越しに曇天を見上げ、アドリアンに連行されていくピケに「がんばって」と手を振っていたのだが。
現在最も守らねばならない王太子殿下の婚約者であるイネスの、その侍女であるピケは特別訓練の中でもさらに特別扱いされている。
王族しか使えない訓練場の使用に、総司令官様による指導。
誰もが羨ましくなる待遇だが、ピケは誰でもいいから交代してもらいたくてたまらなかった。
頼みの綱であるノージーも、特別訓練期間になってからは食事の時くらいしか会えていない。それも、ピケ以上にグッタリしているところを見ると、文句なんて言えるはずもなかった。
「ぐぬぬぬ……!」
腕を引き寄せ、なんとか立ち上がろうともがくけれど、上半身をわずかに持ち上げるのが精一杯。
この無慈悲な魔王による地獄のしごきは、一晩寝たくらいで回復するものではない。
(限界を超えた先にあるものなんて、どうだっていい。もうこれは訓練じゃない。虐待だ。いじめだ。拷問だぁぁぁぁ!)
一応ピケもロスティ国民だが、その気持ちはちっともわからない。
オレーシャ地方出身だからといえばそれまでだが、それにしたってここの人たちは戦闘民族かと突っ込みたくなるくらい強さに執着しがちだ。
彼らを駆り立てるこの国の寒さとは、一体どれほどのものなのか。ピケはもちろん、イネスも耐えられるのか心配でならない。
当の本人は今朝も「雪はまだかしら」と窓越しに曇天を見上げ、アドリアンに連行されていくピケに「がんばって」と手を振っていたのだが。
現在最も守らねばならない王太子殿下の婚約者であるイネスの、その侍女であるピケは特別訓練の中でもさらに特別扱いされている。
王族しか使えない訓練場の使用に、総司令官様による指導。
誰もが羨ましくなる待遇だが、ピケは誰でもいいから交代してもらいたくてたまらなかった。
頼みの綱であるノージーも、特別訓練期間になってからは食事の時くらいしか会えていない。それも、ピケ以上にグッタリしているところを見ると、文句なんて言えるはずもなかった。
「ぐぬぬぬ……!」
腕を引き寄せ、なんとか立ち上がろうともがくけれど、上半身をわずかに持ち上げるのが精一杯。
この無慈悲な魔王による地獄のしごきは、一晩寝たくらいで回復するものではない。
(限界を超えた先にあるものなんて、どうだっていい。もうこれは訓練じゃない。虐待だ。いじめだ。拷問だぁぁぁぁ!)