男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
「くわぁぁ……」

 ただ観察することしかできないでいるピケの前で、四つん這いになった美女が背伸びをした。腰のあたりから生えた長い尻尾が、ピルルッと震える。そう、尻尾だ。

(美女のおしりに尻尾が生えてるぅぅぅぅ!)

 あんぐりと口を開けて呆けているピケの前で、美女はあぐらをかいて座った。
 長い髪が、胸と股間を上手に隠している。
 彼女はピケが見たこともないような美貌をやさしげにほころばせて、微笑んだ。

「おはようございます、ピケ」

 綺麗な顔だ。緩みきった表情にはかわいらしさがにじむ。
 ヒラヒラと花びらが降り注ぎそうなかんばせに、ピケはパチンとまばたきを一つした。

「おはよう、ございます……?」

「どうしてそんな他人行儀なあいさつをするのですか?」

「どうしてって……だって、私とあなたは他人でしょう?」

 ピケの答えに美女は一瞬呆けたような顔をして、それから「あ」と何かに気づいたようだった。
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