男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
「とうとう、来てしまったのね……」
ソファで身を縮こませていたイネスが、重いため息とともに声を漏らす。
その様子は、まるで生贄のようだ。どうしようもないと諦めながら、それでもまだどこかで諦めることができないでいる。まだ引き返す余地があるのではないかと、願ってしまうのだろう。
(イネス様は、優しいから)
だけどその優しさが、この事態を招いた要因の一つであることは確かだ。
(原因とまではいかないけれど……イネス様は、気に病んでいる)
ガルニールが王都へ来る前の数日の間に、ピケとノージーはイネスから告げられた。
「あなたたちと出会った日……わたくしは“うっかり国から侍女を連れてくるのを忘れてしまった”と言いましたけれど……本当はうっかりではないのです」
アルチュールの天使と呼ばれるイネス・アルチュールが国王に溺愛されていたのは、ロスティとの戦争が始まる前まで。
そう。現在、国王はイネスを溺愛していない。
ソファで身を縮こませていたイネスが、重いため息とともに声を漏らす。
その様子は、まるで生贄のようだ。どうしようもないと諦めながら、それでもまだどこかで諦めることができないでいる。まだ引き返す余地があるのではないかと、願ってしまうのだろう。
(イネス様は、優しいから)
だけどその優しさが、この事態を招いた要因の一つであることは確かだ。
(原因とまではいかないけれど……イネス様は、気に病んでいる)
ガルニールが王都へ来る前の数日の間に、ピケとノージーはイネスから告げられた。
「あなたたちと出会った日……わたくしは“うっかり国から侍女を連れてくるのを忘れてしまった”と言いましたけれど……本当はうっかりではないのです」
アルチュールの天使と呼ばれるイネス・アルチュールが国王に溺愛されていたのは、ロスティとの戦争が始まる前まで。
そう。現在、国王はイネスを溺愛していない。