男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
矢継ぎ早に言葉を重ねるガルニールに、イネスがキョトンとする。
(さすが王女様、役者だなぁ)
堂々とした天然ぶりである。
被っている仮面にはほころび一つ見つけられない。
実際は、手紙の秘密もガルニールの目的もわかっているのに、彼女は実に鮮やかに天真爛漫な、何も知らないお姫様を演じていた。
不思議そうに瞬きするイネスに、ガルニールは彼女が手紙の仕掛けに気づいていないと思ったのだろう。
責めるようにイネスをひと睨みした後、カップに視線を落とした。
「そうですか……お気づきに、なられなかった……ほう、なるほど……気づかなかった、ですか」
ガルニールの声は嫌みったらしい。
ボソボソと、それでいて粘つくような陰気な声は、まるで「それでご健在なのか」と言わんばかり。
「ごめんなさいね。何か大事なことが書いてあったのかしら?」
「大事なことといえばそうなのですが……いえ、まだ間に合います。そのために、私が来たのですから」
「まぁ、それなら良かったわ」
「ええ、間に合って良かった」
イネスを見るガルニールの目は、およそ聖職者とは思えない色をしていた。
対するイネスの目も、ガラス玉のように感情が抜け落ちていたのだけれど。
(さすが王女様、役者だなぁ)
堂々とした天然ぶりである。
被っている仮面にはほころび一つ見つけられない。
実際は、手紙の秘密もガルニールの目的もわかっているのに、彼女は実に鮮やかに天真爛漫な、何も知らないお姫様を演じていた。
不思議そうに瞬きするイネスに、ガルニールは彼女が手紙の仕掛けに気づいていないと思ったのだろう。
責めるようにイネスをひと睨みした後、カップに視線を落とした。
「そうですか……お気づきに、なられなかった……ほう、なるほど……気づかなかった、ですか」
ガルニールの声は嫌みったらしい。
ボソボソと、それでいて粘つくような陰気な声は、まるで「それでご健在なのか」と言わんばかり。
「ごめんなさいね。何か大事なことが書いてあったのかしら?」
「大事なことといえばそうなのですが……いえ、まだ間に合います。そのために、私が来たのですから」
「まぁ、それなら良かったわ」
「ええ、間に合って良かった」
イネスを見るガルニールの目は、およそ聖職者とは思えない色をしていた。
対するイネスの目も、ガラス玉のように感情が抜け落ちていたのだけれど。