男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
 ノージーの目が、スッと細められる。
 猫が目を細くするのは敵意なしの意味だったはずだが、ピケは見定められているような気がしてならない。
 居心地悪さを感じてピケが一歩後退ると、ノージーは一気に距離を詰めてきた。

「いっ、意外かな?」

「はい、意外です。もっと子どもだと思っていたものですから」

 ノージーの指先が、ピケの顎を掬う。
 そのまま輪郭を確かめるように指が伝い、ピケはくすぐったさにピクンと震えた。

「ずっと一緒だと、気づかないものですね。あなたはこんなにも、成長していたのに」

 もったいないことをしました、とノージーがいたずらに笑う。
 彼の笑顔を見るのは、これが初めてではないのに。

 だけどこの瞬間、ピケの視界が変化した。
 色鮮やかだった世界が、白色を混ぜた淡く優しい色合いになる。全身がやわらかなもので包まれているような、ほんわかとしたあたたかさを感じた。
 ノージーに対し、抗い難いものを感じる。
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