男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
 ピケは、告白がうまくいってノージーが無事に獣人から人へ変化したことを確認したら、イネスを裏切ってガルニールに協力するつもりだ。
 恩人であるイネスを裏切ったピケを、ノージーは嫌いになるだろう。
 恩人であるピケのために大嫌いなネズミ狩りをしていたような、義理堅い人だから。

 ノージーはピケのことを恨む。
 そして、どうして告白なんてしてくれたのだと憤るだろう。

(その時思い出した私がいつもの私だなんて、なんだか嫌なんだもの)

 たとえ嫌な出来事として思い出されるのだとしても、かわいい自分でありたい。
 なんとも後ろ向きな動機ではあるが、ピケは真剣だった。

 雪化粧した王都を、ピケはすました顔でゆったりと歩く。
 内心はまた笑われるんじゃないかとドキドキしていた。いつもはノージーがピケの注意を引きつけるように話をしてくれるから、こんなことはないのだが。

 ガラス窓の向こうに見える店の中は、どこもすてきに見える。
 どの店なら、ピケが求めるものを買えるのだろう。
 当て所もなく歩く未来しか見えなくて、途方に暮れそうだった。
< 214 / 264 >

この作品をシェア

pagetop