男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
「な、なによ! 美女に見えちゃいけないっていうの? だって、本当に綺麗なんだもの。それ以外になんて言ったらいいのか、私にはわからないわ」

 ぷっくりと膨らんだピケの頰を、ノージーが「まぁまぁ」と宥めるように撫でる。
 子ども扱いされているようで、ピケの頰はますます膨らんだ。

「僕は嬉しいのですよ、この姿になれて。だって、あなたにすてきだって思われないと、困るのですから」

「困る……?」

 ノージーの言っていることはわけがわからない。
 ここまでのことでわかることと言えば、猫耳と尻尾を持つ美女が愛猫ノージーだということ──これに関してはピケの勘でしかない──と、彼がただの猫ではなく魔獣だったということ──そもそもノージーはピケが魔の森で拾ったのだから当然だ──そして彼は理性があるタイプの魔獣らしい、ということくらいだ。
 首をかしげるピケに、ノージーはいかにもこれから大事なことを話しますとでも言うように、もったいつけて喋った。

「理性がある魔獣には、人族に恋をしやすくなる時期があるのです」

 ある一定の時期がくると、理性がある魔獣は大人になる準備として、恋する相手を求めて人前へ姿を現す。
 魔獣の姿は人族でいう幼少期にあたると聞いて、ピケはなるほど、と思った。

(ノージーは私が魔の森から拾ってきたから、もともと人のそばにいた……だから、正確には同じじゃないって言ったのね)
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