男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
「私が秘密を打ち明けたのは、おまえを気に入っているからさ」

「気に入っている……」

「おまえは女性の方が好きなのだろう? だから、私はどうかなと思って。自分で言うのもなんだけど、総司令官だから財力も権力もあるし、見た目も悪くない。けっこう好物件だと思うのだけれど、その気になったり……しない?」

 再びアドリアーナの顔が眼前に迫ってくる。
 混乱の最中にあったピケは反応が遅れ、目を見開いて硬直した。

「まずは試しに一回……キス……してみようか?」

 女性らしい細い指が、ピケの顎を捉える。
 青く澄んだ目は綺麗だ。ぷっくりとした唇も、やわらかそう。
 だけどピケは違う、と思った。同時にノージーの悲しげな顔が思い浮かんで、ピケはハッとなる。

(ああ、私は……)

 ノージーだけが、恋愛対象なのだと理解する。
 男の人は確かに苦手だけれど、だからといって女の人が好きなわけじゃなかった。
 性別も、種族も関係ない。
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