男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
 辛辣(しんらつ)な言葉に、ピケの方がハラハラしてくる。
 これ以上罪を重ねたら、ピケが一緒でも贖いきれるかどうか。
 墓穴を掘らないように黙っていることしかできなくて、ピケは心の中で「ごめんなさい」を繰り返した。

「女の子のおっぱいに顔を埋めている男に言われたくないのだが? むっつりめ」

 椅子から立ち上がったアドリアーナが、ハンッと鼻で笑う。
 対するノージーは歯牙にもかけていないのか、表情は動かない。

「これは確認作業です。頑張って仕事を終わらせて駆けつけたら、かわいいピケが魔王に襲われかけていたのですよ? まったく、死ぬかと思いましたよ。獣人の恋は脆いのです。優しく、大切に扱わないと。うっかりキスなんてしていたら、僕は巻き込み心中していたかもしれません。ああ、そうならなくて本当に良かった」

 どうやら気にしていたらしい。
 正当な理由があるのだと訴えるノージーから聞き捨てならない言葉を聞かされて、ピケはギョッとした。

(巻き込み心中って一体なに⁉︎)
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