男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている

 アドリアンが出ていってしばらく。
 紅茶が注がれたカップから湯気が立ち上らなくなるくらいの時間がたってもなお動く様子のないノージーに、ピケは痺れを切らした。

「ノージー、説明」

 まるで犬に「まて」と言うような口調で、ピケは言った。
 ささやかな胸の間から、不機嫌そうな視線が向けられる。

(くっ! かわいいじゃないっ)

 お気に入りのおもちゃを取り上げられた時の猫のノージーの姿が重なって、ピケは怯んだ。
 だが、いつまでもこうしているわけにはいかない。

(いつかは、聞かなくちゃいけないことなんだから)

 聞く気があるうちに、聞いてしまいたい。
 そうでなくとも、今すぐ逃げたいくらいなのだから。

「いつまで私の生存確認をしているつもり? 私は生きているでしょう」

「それ、本気で……?」

 訝しみと心配を足して割ったような顔をして、ノージーはピケを見た。
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