男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
 念のため、とつぶやいたノージーがピケの目を手で覆い隠す。
 目を閉じると、耳には風の吹く音が、鼻には森の匂いが、肌には室内とは思えない湿度が感じられた。
 ここはカフェの個室なのに、魔の森だと錯覚しそうだ。

 どれくらいそうしていたのだろう。
 あっという間だったような気もするし、長かったような気もする。

 ノージーの手が外れて、ピケはゆっくりと目を開いた。
 ピケの目を見るなり、ノージーがギュッと抱きついてくる。
 グイグイと体を押し付けるようにしがみついてくるものだから、ピケは必死になって抱き留めた。

「ノージー? 一体、何があったの?」

 宥めようと、ピケは肩口に押し付けられていたノージーの頭に手を伸ばす。
 柔らかな髪に指を差し込んで撫でると、いつもならばふんわりとした獣耳が場所を空けてくれるはずだった。
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