男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
「……ない! ねぇ、ちょっと、ノージー! 耳が、耳がないんだけど!」

「いえ、ありますよ、ほら」

 ノージーの手が伸びてきて、ピケの手を誘導する。
 持っていかれたのは、鼻の下から目尻のやや上あたりの、人族の耳があるところで──、

「み、みみぃっ⁉︎」

 慌てふためくピケの動きを封じるように、ノージーは彼女に抱きつく。

「はい、耳です」

「え……ちょっと待って。じゃあ今のノージーは人になっているの?」

「まぁ、そうです」

 グイグイと、力強くノージーはピケを抱きしめる。
 それはもう、ピケが不可解に思うほどに。

「見せて!」

「嫌です!」

「どうしてよ!」

「だってもしもピケが獣人の僕が好きだったら、今の僕は好きになってもらえないでしょう⁉︎」
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