男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
 侍女を辞めた彼らを迎えたのは、カフェ・オラヴァの女主人だった。
 歳のせいでそろそろ引退を考えていた彼女は、たまたまカフェで今後について相談していたピケたちの話を聞き、この店を継いでくれないかと持ちかけたのである。

 突然の申し出に、二人は驚いた。
 ノージーは当然のことながら辞退しようとしたのだが、ピケは違ったらしい。
 店の中を見回し、そして窓の外を眺めて──彼女は言った。

「ノージー。私、やってみたい」

 おねだりするみたいな上目遣いに、ノージーがウッと息を詰まらせる。
 人族になってから、彼は以前よりも感情が豊かになった。
 ピケに対する愛情表現は(はばか)ることを知らず、逆にピケからのかわいらしい反撃には初心(うぶ)な青年のような反応を見せる。
 女主人が追撃とばかりに「二人でできるようになるまで責任を持って面倒をみるから」と言えば、ノージーは赤らんだ頰を隠すようにそっぽを向きながら「仕方ないですね」と答えた。

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