男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
 見ず知らずの女を侍女として雇おうとしている王女も気になるが、それよりもノージーである。
 彼は、美人な王女を前にして、脂下がった顔を晒していた。

(デレデレしちゃって。やっぱり、私に恋をしたとかいうのは冗談だったんじゃないの?)

 ジロリと睨んでも、ノージーは王女を見たままだ。ピケのことなんて、どうでもよくなってしまったみたいである。
 なんだか仲間外れにされたような、存在を無視されているような気がしてきて、ピケは居心地悪そうに体を縮めた。

 体を丸めるピケに気づいた王女が、「あら」と上品に口元に手を当てる。
 くっきりとした眉がへにゃりと下がると、気の強そうな顔が困り顔になった。

「わたくしったら、すっかりノージーさんとの会話に夢中になってしまって。ごめんなさいね。えっと、あなたは……」

 ピケの名前を呼ぼうとして、王女が戸惑う。
 自己紹介もまだだったことに気がついて、王女は「わたくしったらうっかりさん」と苦笑いした。
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