男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
「わたくし、いつもこうなのよ。今回もうっかり、国から侍女を連れてくるのを忘れてしまって……ロスティ側で用意してくれるらしいけれど、まだ会ったこともない方だから不安で……だから、あなたやノージーさんが侍女になってくれるととても助かるの」

 突っ込みどころ満載の話に、ノージーが苦笑いを浮かべる。
 表情を取り繕えないピケは、驚きと呆れが混じり合い、口をぽかんと開けたまま王女を呆然(ぼうぜん)と見返すことしかできなかった。

(いやいやいや、なんで私たちなら大丈夫ってなるのさ⁈)

 アルチュールの女神の言葉(しんこう)は、そこまでするのが通常なのだろうか。
 とても信じられないと訝しむピケの前で、王女はニコニコと悪気なく微笑んでいた。

「ああ、そうそう、まずは自己紹介が先ね。ご存じかもしれないけれど……わたくしの名前は、イネス・アルチュール。アルチュール王の四番目の娘ですわ。まもなく、ロスティ国へ嫁ぐ身ですけれど」

「えっと……私は、ピケ・ネッケローブと申します」

「ピケさん! なんてかわいらしい名前なのかしら。かわいらしいあなたにぴったり!」

「か、かわいい……?」

「ええ、かわいらしいわ。昔持っていたお人形さんみたい」

 ソバカスがお星様みたいで、ステキ!
 そう言って鼻の頭をチョンとつつかれて、ピケは目を剥いた。
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