男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
 袋の中は、とても快適とは言い難かった。
 女の子が走り、飛ぶたびに揺れたし、なによりノージーは今にも死にそうな虫の息。
 だがそれ以上に嫌だったのは、袋の中にいた先客である。長い耳に、真っ赤な目。意識のないそれらは、魔兎と呼ばれる魔獣だった。

『まさか、彼女がこれを全部狩ったのか……?』

 にわかには信じがたいことだ。この魔の森で、小さな女の子が一人で狩りをするとは。
 それも、普通の兎ではなく火の魔術を使う魔兎とは恐れ入る。

『もしかして、僕のことも食うつもりで……?』

 遠い東の国では猫の皮を剥いで作った楽器があるらしい。
 何度目の猫生で聞いたのか、もうノージーは思い出せないが、皮を楽器にする文化があるのなら肉を食べる文化も存在しそうだ。

『かわいい女の子に食べられるのなら、悪くない最期じゃないか』

 ノージーは静かに目を閉じた。
 あのちっちゃな口に僕は食べてもらえるのか、と満足そうに微笑みながら。

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