男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
「で?」

「で、とは?」

「ピケとはどうなっているのです」

「ですから、ピケとのデートに先駆け、デートのための服を買ってきたところで……」

「デートのための、服」

「ええ。なにせピケはろくな服を持っておりませんので。持っている中で一番上等な服を着たとしても、きっと気後れしてデートになんて来てくれません」

「そうなの……⁉︎」

 王女であるイネスには、よくわからない感覚なのだろう。彼女は、ギョッとした顔をして立ち上がる。それからノージーの視線に気がついて、恥ずかしそうに椅子へ座り直した。

「僕としてはどんな格好をしていたって彼女しか見えないのですが、どうせなら他人の目を気にしてビクビクしている彼女より、心から楽しんでいる彼女を見たいじゃないですか。ですから、手始めに王都へ出ても恥ずかしくない服を手に入れてきた、というわけです」

「そうでしたの……でもね、ノージー。あなたはのんきすぎだと思いますわ。いくらピケが恋愛ごとにうと……いえ、奥手なタイプなのだとしても、魔獣が獣人でいられる時間は有限なのですから」
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