男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
「んぅ」

 ぐりぐりとおなかに顔を当てて、ちょうどよい場所を探る。
 かたいおなかはちょうどよい枕にはなり得なかったようで、ピケは不満そうにため息を吐いた。

「やぁらかくない……」

「それはすみませんね。あなたのようにふわふわした体をしていませんので」

「ふわふわって……心外だなぁ」

 まるで太ったと言われているようだ。
 まぁ確かに、ここへ来てから多少ふくよかになった自覚はあるが、決してたるんでいるわけではない。カスカスだった体に潤いがきた、くらいのレベルだとピケは思っている。
 それはノージーも理解しているので、すかさずフォローを入れた。

「太ったと言っているわけではありませんよ。ちょうどよくなってきた、と言っているのです」

 ピケの寝乱れた髪を手櫛で整えながら、ノージーは感慨深く言った。
 潤いのないカサカサの髪、ポキンと折れてしまいそうな細い手足、ぺったんこの胸とおしり。
 人族の身では恐ろしい魔の森を物ともせず、軽やかな身のこなしで魔兎狩りをしているのが不思議なくらい、彼女は貧相な体をしていた。
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