今日からニセモノお姫様!
「…では先程話した通り、明日からこの屋敷には婚約者候補の方々と使用人たちがやって来ます。本日までは乙女様と私しかこの屋敷にはいませんので大丈夫ですが、明日からはどこであっても一切ボロを出さずにアナタは乙女様でなければいけません」
とんでもねぇな。
毎度のごとく淡々と始まった伊織の説明にげんなりする。
無理ゲーじゃん。
そんな私を見て「顔。そんな顔乙女様はしません。常に不敵に笑っているのが乙女様です」と言われてしまった。
いいじゃん。今日くらい。
そう思ったがとりあえず顔は引き締めた。
「まず乙女様の性格をお伝えします。乙女様は勝ち気で高飛車であり、まさに世界は私を中心に回っているといった性格で欲しいものはどんな手を使っても手に入れます。そして無類の男好きでお気に入りの男たちを数人いつも侍らせているお方です」
「は?」
伊織の乙女様説明に思わず先程引き締めたはずの表情が歪む。
何だって?
私のイメージしていた乙女様像が音を立てて崩れていく。
私の乙女様のイメージはお淑やかで可憐。勝ち気で高飛車でしかも無類の男好きなんて真逆もいいところではないか!
「明日こちらにやってくる使用人は全て見目の麗しい乙女様厳選の男たちです。そして婚約者候補たちはその中から更に選び抜かれた精鋭中の精鋭。使用人を始め、婚約者候補たちは膨大な財産がある乙女様に気に入られたい、あるいは婚約者になりたいと企み、甘い言葉や態度で間違いなくアナタに迫ってくるでしょう」
「はぁぁぁー!!!???」
無理じゃん!そんなの絶対ボロ出るじゃん!
私彼氏いない歴=年齢なんだよ!
伊織の乙女様説明がどんどんおかしな方向になっていくにつれ、私のリアクションも乙女様らしからぬものになっていく。
多分だがこんな時でも乙女様は絶対に叫ばないと思う。乙女様常に不敵に笑っているらしいし。