今日からニセモノお姫様!
「親孝行な娘を持てて私たちは幸せです。前借りで頂いた報酬で家のローンを払い終えることができました。本当にありがとう。大変だと思うけどバイト頑張ってね。そしてそちらのお家の方の言うことをよく聞いてください。次会える時を楽しみにしています。母と父より」
「は!?」
伊織が丁寧に読み上げた手紙の内容にまたまた驚いて私は思わず叫んでしまう。今の私には乙女様を意識する余裕なんてもちろんないのでそこは仕方ない。
ちょーっと待って!
え?前借りで貰った報酬で家のローンを払い終えた!?
嘘でしょ!?
「て、手紙!ちゃんと見せてください!嘘ですよね!?」
ガタンっ!と大きな音を立てて取り乱しながらもその場から立つと私は伊織の持っていた手紙を半ば強引に奪った。
そして急いで内容の確認をする。
私の隣で大きなため息をついて「乙女様はそんなことは…etc」と伊織から本日何度目かもわからない注意を受けているが今は完全に無視させて欲しい。
いや、させてもらう。
伊織の注意を無視しながら確認した親からの手紙は伊織が読み上げた通りの内容だった。
一言一句たりとも間違えていない。
しかも手紙の字は私がよく知っている親の字であった為、そのことが私をさらに絶望させた。
これは間違いなく私の親からの手紙だ。
終わった。
私はもう乙女様になるしかない…いやなり続けるしかないのか。
「…私が前借りで頂いた報酬の金額はいくらですか?」
頭が真っ白になりそうになったが何とか耐えて力なく伊織に聞く。
すると…
「5000万ほどですね」
と相変わらずの無表情で無慈悲に伊織に言われた。
伊織の無表情が無慈悲さにさらに拍車をかけている。
終わった…。