今日からニセモノお姫様!
華宮乙女様というお嬢様は。
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契約云々の話が終わった後、不審者執事ではなく、本当にこの家の執事だった伊織から疲れているだろうからと部屋で休むように言われ、休んでいると、その間に伊織が豪華絢爛な夕ご飯を用意してくれたので食事を食べる部屋に移動して食事が始まった。
「それでは乙女様。俺以外の明日からこの屋敷に住まうことになる婚約者候補たち、それから使用人たちに乙女様の素性がバレないようにいろいろと乙女様について頭に入れていきましょう」
テーブルについて夕食を食べ始めると伊織が早速と言った感じでそんなことを言って来た。
いや、その話も大事かもだけどさ。
「あのー。それも大事だと思うんですけ…いやだけど、伊織の夕食は?食べないの?」
目の前に用意されているのは私の夕食のみ。伊織は私の隣に立っているだけ。
この状況に疑問を持ち私は首を傾げながら伊織を見つめた。
ちなみにこのおかしな喋り方は乙女様に成り切る第一段階として課せられた課題である。
伊織と呼び捨てで呼び、敬語は使わない。
自分の使用人である人物に敬語はおかしいからね。ボロを出さない為にも誰もいない場所でもできるようにならねばならないらしい。
「…俺は執事です。主人である乙女様と食事などあり得ません。そんなんではバレますよ。今後一切そのようなことは言わないように」
「あー。はい。わかりました」
「敬語」
「っ!うん」
疑問をぶつけた私に対して伊織が絶対零度の瞳でギロリと睨む。
なるほどって思って返事をしたが思いっきり素が出て来てしまい、慌てて私はそれを修正した。
もうこの時点で明日には誰かにバレる気しかない。