DEAR again〜アイスクリスタルのやくそく
「今日お邪魔したのは、今月から発売を開始した先生の最新作のご報告なんです」
「そうなの」
「ええ。とても評判が良くて、それにあの浜野由梨絵が童話を書いたと、マスコミでも話題になっています」
「そう。それは良かった」

 二十八歳で小説家デビューしてから、大手出版社の新人賞を皮切りに、様々な賞を獲得してきた浜野由梨絵は、切ないラブストーリーで世間の人々を魅了した。いくつかの作品はドラマや映画にもなった。作家生活三十周年を迎えた今年、どんな作品を発表するのか注目されていた彼女は、評論家たちの予想を裏切り、小説ではなく、何と童話を書いたのである。

 浜野作品初の童話。それは、かわいらしいクリスマス・ストーリーだった。

「きっと挿絵が素敵だったからよ」
「いえいえ。またそんな冗談をおっしゃって」

 会話の合間に、この部屋に入ったときから流れているメロディがわたしの耳をとらえた。毎年、クリスマスの季節になると、浜野由梨絵はこの曲を繰り返し聴いている。
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