DEAR again〜アイスクリスタルのやくそく
「先生。この曲は・・」
「あら。こんな古い曲、佐川さん知ってるの?」
「ええ。クリスマスシーズンに車を運転していると、ラジオからよく流れてきますよ」
「あなたが生まれて間もない頃に流行った曲よ。恋人の帰りを待つ女心を綴った切ない歌詞は、今でも色あせない」
「クリスマスが近づくと、先生はいつもこの曲をお聴きになっていますが、何か特別な思い出があるのですか」

 何気ないわたしの質問は沈黙で迎えられた。失礼なことを言ってしまったのかと顔色を窺ったが、機嫌を損ねた様子はなく、何かを考えているようだった。

「あの童話には秘密があるんだ」
「えっ?秘密?」
「そう。そして続きがある」

 唐突な話の展開に戸惑う。先ほどのわたしの質問と童話作品に何の関係があるというのだろうか。

「聞きたい?今まで誰にも言ったことがない秘密を」
「もし聞かせていただけるのなら、是非お願いします」

 浜野由梨絵は何も言わずにうなずいた。そして椅子から立ち上がり、本棚から一冊の本を抜いてわたしに手渡した。
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