【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜
「……聖良」
「はい。……んっ」
棗さんはなぜか、愛のない結婚をしたわたしに、毎日キスをする。どうしてキスするのかなんて分からない。
だけど夫婦となった今、それを拒むことさえ許されない。わたしは鷺ノ宮グループに支配されているから。そんなことをしたら、この結婚をした意味がない。あわよくば彼の子供を生んで、跡取りを残すことだって、きっと考えているだろう。
棗さんはわたしよりも5歳年上。結婚した以上、わたしは棗さんの言うことに逆らえる訳はないのだ。
「……聖良、何を考えている?」
「……いえ、別に。夕飯に、しましょうか」
「あ、ああ……」
棗さんがいつもわたしに対してそう言う。何を考えているかなんて、絶対に教えてやらない。そんなこと教えたら、わたしはまた鷺ノ宮グループから去ることになってしまう。
そんなことは絶対に出来ない。この結婚だって、棗さんが、わたしの父を説得してくれたから出来ただけで。わたしだけなら絶対にムリだった。