【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜




 そんなことを考えたことはなかった。聖良との子供……。

 確かに社長の言う通り、夫婦になったからには、子供を持ちたいと望むのは、きっと当たり前のことなんだと思う。……しかし結婚して間もなくしても、俺たちの間に子供を作ることを、聖良は許してくれるのだろうか……。

 俺との子供がほしいと、聖良が言ってくれる日は来るのだろうか……。

 「お前は鷺ノ宮家の長男だ。長男として結婚した以上は、鷺ノ宮家の跡取りを残してくれないと困るというはある。……しかしわたしは、お前たち夫婦の事情を深く知っている訳ではない。子供を望むかどうかは、お前たち自自身が話し合って決めることだ。だから強要はしない」

 「……社長」

 社長の気持ちはきっとそれが本心だと思う。たけど社長の言う通り、俺は鷺ノ宮家の長男だ。鷺ノ宮家を背負う者として、跡取りを残していくことは自然なことだとは思った。

 ……けれどそれは、妻である聖良にも、鷺ノ宮家を背負わせることにもなる。


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