【完結】偽り夫婦の夫婦事情〜偽りの愛でも、幸せになれますか?〜


 

 社長はそれだけ言うと、棗さんの肩を叩いて長谷川社長の所へと歩いて行った。

 「……大丈夫か?聖良」

 「はい……」

 「……帰ろうか?聖良」

 「……すみません。わたしのせいで……」

 申し訳ないという気持ちもあって、なんだかちょっと心が痛かった。そんなわたしに、棗さんは「お前のせいじゃない」そう言って頭をなでてくれたのだった。

 「……ありがとうございます」

 棗さんはどうしてこんなに、優しいのだろうか……。

 「よし、ここで食事でもして帰ろうか。せっかくのパーティーだ。……もう少しだけ、楽しもう」

 「……はい。お腹、空きました」

 色々あったけど、疲れてしまった。だけどお腹空いてしまった。

 棗さんとふたり食事をしてから、その日は帰ることにした。棗さんは帰る間、ずっと手を握ってくれていて。それがどうにも安心してしまって……。

 「聖良?」

 「……棗さん、ありがとうございます」

 「え?」

 「……わたし、棗さんの妻で良かったです」



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